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岐阜ライトレールの事業を考える。
カテゴリ: TransprtNetworkコラム
…手元に「テレビの嘘を見破る(今野勉著、新潮新書)」という本がありますが、まだ読んでいないので改めて書きたいと思うのですが…「報道だからこそ冷静に」できないものでしょうか…と思う今日この頃です。「無理」と一言言われてしまえば、それはそれで仕方ないのですが(苦笑)。

さて、「岐阜ライトレール」が製作した事業計画書(4/14、Ver7)を読ませていただきました。事業計画は把握できたのですが、気にかかる箇所が少なからずあるのでまとめておきたいと思います。


その1 他事業者との調整が必要な箇所
名鉄から資産譲渡を受けなければならないことや、並行するバス路線との調整などを図る必要があるでしょう。資産譲渡について仮に問題がクリアーされたとしても、両線とも並行バス路線があることなどを考えると、「岐阜市および周辺域」の自治体などを巻き込んだ交通網の再編を図らざるを得なくなるでしょう。
ただ、その点については事業者同士の利害関係や調整次第でうまく行く可能性があり、複数回にわたる事業者同士の調整を図る必要があるでしょう。ですので、この問題については事業者の動向を見守りたいと思います。

その2 路線運行に関する疑問点
・軌道改良によるスピードアップ
通過速度向上や運行時間確保(→車内運賃精算から駅精算へ切り替えることによるもの)、最高速度の向上を実施したとして、何分の切りつめが「可能」なのか。従来不完全だった15分サイクルを修正することが可能でも、各区間で5分の短縮は非常に難しいのではないか。現在ただでさえ「JR西日本」のやり方に批判が集中している状態で、「余裕時分」を各区間ごとに確保した上で交換可能区間を5分で走破する(実際には余裕時間を考えると4分半くらいではないか?)ことは物理的に可能なのか、疑問が残る。
ちなみに、個人的にはJR西日本のスピードアップと所要時間短縮の恩恵を多分に受けていることは事実で、そこまで(マスコミなどが)批判をするのはいかがなものかと思っているのですが(…恩恵を受けてきた人も多分にいるだろうに)。
個人的に乗車した範囲で考えると、最高速度の向上は可能としても、駅間が長くないことから広電並みの最高速度を確保するのが限界だと思う。確か、西広島~宮島間の距離が16.1km、所要時間30分(駅数20、所要時間と駅数はJA広島病院前電停開業前のデータ)ですから、表定時速32.2kmとなります。広電宮島線(前述の区間)は鉄道線ですから、道路上の混雑とは無縁です。ただし、運賃支払いシステムは車掌・運転手への現金・カード支払いですから、若干余裕時間は多くとってあると思います。

・運賃システム変更に関するもの
駅を独立して設置している場所(専用軌道上)はともかくとして、道路上の場合はどうするのか。安全地帯(幅員が広い高規格型…車椅子乗降可能)の完全設置が出来ればその上に設置することも可能でしょう。ただ、定期券などによる乗り越しのことを頭にいれておく必要があるでしょう。
広電の場合、磁気カードシステムが採用されていますが、宮島線と主要停留所にはホーム上に専用の乗車駅を記録するためのカードリーダーシステムが導入されています。この機能をすべての乗車券類に対応させたシステムを使用することで、乗車時の改札は事実上不用になるでしょう。下車時に関しては、駅または車内での集札業務が必要になりますから、いずれかのシステムを導入する必要があるでしょう。
仮に、最終的には「駅改札」とすると、併用軌道区間での問題が起こります。道路上に乗り場があるので、その辺の対策が必要になるでしょう。

・不正乗車への対策
不正乗車自体が違法行為ですが、運賃値上げとシステム変更で少なからずそういう輩が出るのではないか。現状ですらそういう人々が少なからず見受けられるのである。
車内授受であれば、乗車駅証明出来るものがあれば問題ないでしょうけれど、駅精算の場合は多少無理が出てくるのではないか。
例えば柵を乗り越える人がいるかもしれないし、改札機を突破する人がいるかもしれない(初乗り乗車券で改札機を突破する無法者はよくみます…そして結構困ります。昔入場用改札機が2台しかないのにその2台とも故障して混乱したことがありました)。そういう人々への対策をある程度考えておく必要があり、場合によっては「増運賃」のシステム変更を国土交通省へお願いする必要が出てくるかもしれません。

その3 車両の使用に関する疑問点
輸送改善計画では、当初から10分間隔にするのではなく、段階的な改善を行う予定のようです。ということは、初期のうちは旧型車両でも何とか問題ないことになりますが、すでに車両の一部は豊橋・高知へ行っちゃいましたし、他にも福井への譲渡組がいます。
初期の使用は従来の車両…ということになると思うのですが、気にかかるところがいろいろあるので整理しておきましょう。

・使用車両の880形について
平成18年度譲渡であるものの、実際に使用するには一度岐阜側に譲渡(もしくは貸し出し)したうえでの使用となるので、その辺の「扱い」を考えておく必要がある。また、整備工事を名鉄住商でやるそうなので、必要な時期が来たら即運用離脱をするのではないか。そうなった場合の車両確保をする必要がある。ということは、この車両譲渡のタイミングまでに新型車両を5編成以上準備し、880形と入れ替える必要がある。

・600形の使用について
乗降の簡便さを考えるともっとも不適当と考えられる。仮に、徹明町・梅林経由で新岐阜駅前(旧停留所名を使用、以下同じ)発着とするならば、必ずしも600形ではなく570形でも同様の運行は可能であると考えている。問題は整理券発行機等の整備であるが、600形で発生する不用品を転用することで最低1両分の確保は可能であると考える。

・DMV導入について
最新号の鉄道ファン誌を確認してきたが、実用化への道は簡単ではないと考える。実際、乗客を乗せる輸送を行う以上は安全性の確保が出来るかどうか、というものを確認しなければならないと考えるからである。また、定員の考え方が鉄道と自動車で異なり、走行するシステムに「ゴムタイヤ」を使用するのであれば、重量オーバーを起こさないように気をつける必要がある。
また、「実用化」が運行開始までに間に合う可能性が微妙であることを考えると、他のシステムによる一般鉄道車両の導入のほうがよいのではないか。
路面ディーゼル車は札幌市交通局で使用された実例があるので実用にするまでには問題が少ない事(ただし、完全低床車両にするのは難しいかも)などを考えると、現状では一般車両の導入のほうが適切ではないか、と考えます。
ただ、黒野~新岐阜運用に、黒野から他系統バスへの直通を考えている場合などを考慮していないので、そういう事業計画を考えているのであればまた、その点については考える必要はあるでしょう。

都市交通の考え方
結局の所、独立採算でするかどうか別にしても、「交通網」の再編・拡充は不可欠な要素になるでしょう。その場合、岐阜バス側との調整が一番大変な事態になるでしょう。
仮に、一度事業参入を果たした場合で赤字となった場合に、「法律上は」撤退が自由ですが、道義上それをするのはいかがなものか…という気がします。初期の赤字は(計画内に)折込済みなのでよいと思うのですが、利用客がうなぎのぼりになるとも思えないのです。
スタート時は朝夕のみの運行ということですが、その場合に「他の時刻の輸送手段」の確保が必要になるでしょう。そうなると、例えばバスとの共通定期を考えなければならないかもしれない。

利便性の向上について、事業計画書では岐阜~名古屋間のJR(国鉄)の利便性向上と利用客の増加に関しての記述がありますが、この区間のもともとのシェアは名鉄が握っていたわけです。利便性に加えて運賃の逆転現象が発生(名鉄はJRに比べると同区間で「遅くて高い」のりものになっている)。名鉄の利用客は大幅に減っています。
ライトレール社の路線案で行くと、岐阜バスの利用者の多くが電車に移る事は想定できますが、自動車利用者が鉄道に転移する可能性が微妙、ということが挙げられます。
バスの利便性とそれに関する「利便性の提示」を行ってなお、完全に転移するかどうかは微妙だと思います。美濃町線並行道路の渋滞回避をするための利用や、そういう「自動車の不便さ」を回避するための利用は促進できても、「自動車よりも電車が便利」だから、という利用喚起はなかなか難しいと思います。


…とまあ、気になる点を挙げてみましたが、岐阜ライトレールのブログにもあるように、「やってみなきゃ分からない」のもまた事実なんですよね。
もし、仮に柳ケ瀬商店街に人を呼びたいのであれば、同時に「商店街」を自分たち(=商店主一人一人)の力で盛り上げなければならないと思うし、そのためのサポート機関として路面電車を活用するのは十分よいと思います。ただ、そのためには岐阜市や周辺の住民一人一人がもっと路面電車の効用を考えるべきだし、その考えが成熟しないままの廃止だった、と考えられるんですね。
万葉線の場合は、結局の所「高岡駅前の商店街」の人々が万葉線の存在が重要だ、ということに気づいたわけだし、自動車利用者にもその「必要性」を説けたからこそ行政が存続する決定をくだせたわけです。岐阜市の人は、もしかすると路面電車の重要性にあまり気づいていないんじゃないかと思うんです。気づいているのはごく一部の人だと思うんです。


…ですます調とだ・である調が混じってしまい申し訳ありません。しかもインターネット界では結構嫌われる長文…。どうも、語りたいことが多いと長文になる傾向があり、しかも熱が入れば入るほど長文になる…というありさまです。ごめんなさい…。

個人的に、岐阜ライトレール社の動向は気になるのですが、その大前提である資産譲渡から多難な様相を見せていますからね…。もしかすると、その資産譲渡がクリアーできて、かつ岐阜バスとの調整を図ることができるなら、再生できる可能性は少なからずあると思います。結局は、「資産譲渡」の可否がライトレール社の運命を握っていると考えられます。
再び岐阜の町に「新しくなった」路面電車が走る日が来るのか、気になるところではあります。

…にしても、この文章を完成させるのに2時間弱もかかったとはねえ…うーん(笑)。
ちなみに、「Simplex's Memo」の方にトラックバックを張らせていただきました。あわせてお読みいただければ幸いです。
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編集 / 2005.05.07 / コメント: 1 / トラックバック: 3 / PageTop↑
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